「診療所開設届で実際によく詰まるポイント7選」

まず、診療所を開設したら管轄の保健所に「診療所開設届」を提出する必要があります。
(地域により保健所が窓口でない場合もあります。例:京都市は京都市役所が窓口になっています)

「届出」ですので、”事後”の提出になりますが、

「とりあえず提出すればいい」
「様式を埋めれば終わり」

というものではありません。

特に個人開設の場合、
保健所との事前確認、添付書類の整合性、標榜科目の考え方など、
“実務上の論点”が非常に多く存在します。

今回は、実際によく相談・確認が必要になるポイントを、
医療法第8条関係(診療所開設届)を踏まえてまとめます。

※本記事は「個人による診療所開設」を前提にしています。
医療法人による開設届については、また別記事で解説予定です。


① 「診療所開設届」は“開設後10日以内”に提出する

診療所開設届は、医療法第8条に基づき、
診療所を開設した後10日以内に提出する必要があります。

ただし、ニュアンスは「開設したんで届け出ます!よろしく!」
という流れではありません。

実際には、

  • 図面確認
  • 診療所名称
  • 構造設備の確認
  • 標榜科目
  • エックス線設備
  • 歯科技工室の有無

などについて、
事前相談を行うケースが一般的です。
事前相談なしで進めると補正や追加確認が発生しやすいため注意が必要です。


② クリニック名称・標榜科目は自由に決められるわけではない

意外と多いのが、
「好きなクリニック名称を使用した」
「好きな診療科名を使用したい」
というケースです。

診療所名称や診療科名にはルールがあり、
医療法や広告規制との関係も踏まえる必要があります。

広告規制ガイドライン等に反しない限り「そのクリニック名は使用できません」ってことにはなりにくいですが、
「なぜその名称にするのか」を述べた、”診療所名称理由書”を求められることも少なくありません。

診療所名称や標榜可能な診療科目は厚生労働省などのHPで詳しく説明されていますのでご覧いただくか、
使用可能かどうかを管轄の保健所・厚生局に事前確認をすることを強く推奨しています。


③ “敷地面積”とは何を指すのか?

実務上、かなり迷いやすいポイントです。

「敷地面積」と聞くと、
単純にテナント面積を記載すればよいと思われがちですが、
これは土地のことを指します。

物件の管理会社様や建物が新設の場合は建設業者様から入手する必要があります。

また、法務局で取得できる
地積測量図や公図を添付書類として提出することも可能ですが、
いずれにしても敷地の面積を少数第2位まで正確に求められる(大阪市保健所の場合)ので事実に基づいた資料が必要になります。

こちらも都道府県や市によって求められる要件などが細かく異なるため、提出予定の図面をメールで事前に管轄の保健所に送るなど、確実に不備がないか調整が必要になります。


④ 内装工事と保健所確認のタイミング

内装工事が完成してから相談するのでは遅すぎるケースがあります。

  • 手洗い設備
  • 動線
  • エックス線室
  • 待合スペース
  • 消毒設備
  • 平面図に面積が記載されているか(各部屋の面積の記載推奨)
  • 待合・診察室・受付などが設けられ、各部屋が仕切られているか

    など、確認される事項はたくさんあります。
    都道府県によっては各部屋の面積も求められます(兵庫県など)。
    必ず保健所に平面図を確認してもらってから着工するようにしましょう。

    ちなみに診療所開設届を提出したあと、
    地域によりますが任意のタイミングで保健所等の職員が平面図と相違がないか、
    などの観点で立ち入り調査が実施されます。

⑤ 消防署への届出も忘れてはいけない


消防関係の確認・届出も非常に重要です。
特に、

  • テナント用途変更
  • 内装工事
  • 面積
  • 防火区画
  • 避難経路
  • 収容人数

などによって、
消防側との協議や届出が必要になる場合があります。

また、

  • 防火対象物使用開始届
  • 消防用設備等に関する確認

など、
開設スケジュールに影響するケースもあります。

基本的には内装業者サイドで担ってもらえることが多くありますが、責任の所在はあくまで開設者ご本人です。
届出がなかった場合、直ちに営業停止となるわけではありませんが、
開業前後で少しでもバタつかないように必ず内装業者様に消防設備に関する届出について確認しておきましょう。

保健所周りの話とは少し異なりますが、
実務上は非常に重要なポイントの一つです。


⑥ 添付書類は“揃っているだけ”では不十分

添付書類は、
単に提出すればよいわけではありません。

例えば、 賃貸借契約書に関してだけでも

・届出時に双方の署名または記名押印がされているか(されていない場合はその正当な理由)
・契約締結日が開設日よりも後になっていないか
・転貸借かどうか

などについて、 細かくみられます。
特に転貸借契約の場合は注意が必要です。

問題なく契約書に押印したが、
「実際の賃貸人と所有者は違っていた。 」
なんてことも結構あります。

その場合は別に転貸借契約書や所有者が”転貸に合意している旨”がわかる覚書などを求められる可能性が大きいです。
賃貸人が必ず所有者とは限らないので必ずチェックをしましょう。

また、医師免許証と臨床研修修了登録証も原本照合が必要です。

当日に持参できればよいですが、そうでない場合は、

・事前に原本照合をしたもので大丈夫なのか
・管轄外の保健所で原本照合されたものでもいいのか

この辺りも確認する必要があります。

余談ですが沖縄県那覇市に提出したときに

「本保健所で原本照合したものしか受け付けません」

と言われた経験もあります。
前任の担当者の方には事前に事情を伝えて、 関西圏で原本照合したものを持参すると伝えていたのですが、
提出のタイミングで担当者が変わったようです。

ちなみに、その担当者の方にもしっかりと事情を説明して、 無事に受理はされました。

添付書類はこのように、ひとつずつとっても入念な確認が必要になってきます。
あらゆる視点で開業準備を進めていく中で、 かなり骨の折れる作業ともいえますが、 それくらい重要な届出と捉えることができると考えています。

※添付書類は地域によって異なります。大阪市に関しては賃貸借契約書は不要です(令和8年5月10日時点)


⑦ 「開設届」で始まりでも終わりでもない

診療所開設前後は保健所周りだけでなく、
まだまだ多くの手続きが必要になります。

例えば、

  • 保険医療機関指定申請
  • エックス線関係届出
  • オンライン資格確認
  • 施設基準
  • 支払基金へのオンライン請求利用申請(社保・国保など)
  • 税務関係の各種届出(個人の事業開業届・給与支払事務所等の開設届など)
  • 労務関係の各種手続き(社会保険加入手続き・労働保険など)

など、多岐にわたります。

そのため、
「まず開設届だけ出せばいい」
という考え方では、
後工程でスケジュールが崩れることがあります。


まとめ

診療所開設届は、
一見シンプルに見える手続きですが、
実際には事前調整・添付書類・構造設備確認など、
多くの実務論点があります。

特に、

  • 保健所との事前相談
  • 他手続きとのスケジュール整理
  • 将来的な法人化や分院展開

まで見据えて進めることが重要です。

保健所対応・厚生局指定申請・医療法人設立・分院開設など、
医療機関に関する各種手続きをサポートしています。

「何から始めればいいかわからない」
という段階からでもお気軽にご相談ください。

Ease Float 行政書士オフィス
代表行政書士  冨吉 千裕

医療法人の理事・事務長として、
クリニック開設〜運営・医療法人化まで実務経験あり。

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